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Internet Infrastructure Review(IIR)Vol.22
2014年2月18日
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目次

2.3 大規模インフラ構築・運用のポイント

クラウドサービスを提供するような大規模インフラでは、主に「物理構築」と「インフラ技術・運用」の大きく2つのポイントがあります。インフラ技術・運用については、次回以降複数回に渡り紹介する予定です。第1回目となる今回は、物理構築に焦点を当てて紹介します。

クラウドサービスでは、大量にしかも短期間でのインフラ構築が求められます。その要求に対して、私達は様々な導入方法を検討し、結果的に当初の約1/3にまでリードタイムを短縮することに成功しました。そこに至るまでに直面した課題と、どのように乗り越えてきたのか、その一端を紹介します。

2.3.1 現地構築

図-4 物理構築後に発生する大量の梱包材(廃棄物)

図-4 物理構築後に発生する大量の梱包材(廃棄物)

オンプレミスやデータセンターを間借りするコロケーションサービス利用におけるIT機器の物理構築では、今でも「現地構築」というのが一般的ではないでしょうか。

使用するサーバやストレージ、ネットワーク機器などのハードウェアを設置場所に送り、現地でキッティング・ラッキング、LANケーブルや光ファイバーケーブルなどの配線作業を行います。IIJ GIOでも当初は同様のアプローチを採用していました。しかし、大量の機材を扱うが故に開梱やセットアップ作業のための広大なスペースがデータセンターに求められ、更に構築後に発生する大量の廃材処理や現地での度重なる初期不良対応など、大規模環境の構築作業ならではの課題に直面しました。(図-4)

2.3.2 コンテナ搬入

2011年4月には、商用として日本初の外気冷却コンテナ型データセンター「松江データセンターパーク」を島根県松江市に開設したことをうけ、次に「コンテナ搬入」を導入しました。(図-5)

これまでサーバは厳重に梱包され、体積は8倍程度となり、それに伴い運ぶ車両数は必然的に増大しました。それに対して、サーバメーカーの工場にラック付きのコンテナを搬入し、工場内でキッティング・ラッキングからラック内配線まで仕上げてしまうことで、サーバ搭載済みのコンテナを運んですぐ使えるというコンセプトと、構築・輸送コストの削減を同時に実現しました。更に、作業後に大量の梱包材が廃棄物となってしまう廃材処理の課題も解消されました。(図-6)

図-5 松江データセンターパーク拡張工事完成イメージ

図-5 松江データセンターパーク拡張工事完成イメージ

図-6 搬入されたコンテナ設置風景

図-6 搬入されたコンテナ設置風景

また、当初のコンテナから幅を2.5m以下に抑えたスリム型コンテナを開発することで、一般的な大型トラック(※6)による低コストで柔軟な輸送を可能にしました。(図-7)

このようにコンテナ搬入を導入することで、短期間で大量のIT機器を用いたサービス提供が可能となり、データセンターでの作業を可能な限り減らすことができるようになりました。ただし、現地設置後の空調ユニットなどとのファシリティ調整期間の発生、現地での初期不良対応といった課題は残ったままとなりました。(図-8)

図-7 大型トラックによるコンテナ搬入

図-7 大型トラックによるコンテナ搬入

図-8 コンテナ内作業と初期不良対応の様子

図-8 コンテナ内作業と初期不良対応の様子

2.3.3 ラック搬入

都市型データセンターで我々が採用したのが「ラック搬入」です。

コンテナ搬入ではサーバメーカーの工場にラック付きのコンテナを搬入しましたが、ラック搬入ではラックのみをサーバメーカーの工場に搬入します。そうすることで、工場内でキッティング・ラッキングからラック内配線まで行う部分はコンテナ搬入と同様ですが、加えて通電・初期不良対応までを工場で実施することにより、搬入後のリードタイムの更なる短縮を図りました。当然、輸送による機器不良が起こっては本末転倒ですので、搭載機器への影響を最小限に抑える輸送の工夫も盛り込みました。(図-9)

次に考慮が必要なのが、データセンターにおけるラックの搬入経路です。ラックにサーバを積載した状態でかつ立てた状態を維持するため、搬入経路にはラックの重さに耐えられる耐荷重能力と、台車に縦に載せた状態で運べる十分な高さが求められます。(図-10)

図-9 サーバ工場内でのラッキング作業

図-9 サーバ工場内でのラッキング作業

図-10 ラック搬入の様子

図-10 ラック搬入の様子

更に重要なのが、天気です。梅雨や台風シーズンと重なることもある中、遅延なく搬入作業を進めるには、雨対策が欠かせません。ラックには通常の緩衝材の他、防水処理を3重に施して万全を期しています。

ここまで、都市型データセンターへの対応を紹介しましたが、ラック搬入はコンテナ型データセンターに対しても有効です。コンテナ自体は現地で空調ユニットと接続しておき、中のラックのみをサーバメーカーの工場へ搬入します。

そうすることで、コンテナを現地設置した後に発生する、空調ユニットなどとのファシリティ調整期間の短縮を図ることができます。

以上のような工夫を施した上でラック搬入をすることで、サーバ稼働開始までのリードタイムを大幅に短縮しました。

  • (※6)車体の幅が2.5m以上の場合、通行に特別な申請が必要な「特殊な車両」になる。前後に先導車をつける必要があり、通行できる道路が制限される。
2.クラウドコンピューティングテクノロジー

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