ページの先頭です


ページ内移動用のリンクです

  1. ホーム
  2. IIJの技術
  3. セキュリティ・技術レポート
  4. Internet Infrastructure Review(IIR)
  5. Vol.67
  6. 4. フォーカス・リサーチ(2)3G停波とMVNO

Internet Infrastructure Review(IIR)Vol.67
2025年9月
RSS

目次

4. フォーカス・リサーチ(2)

3G停波とMVNO

4.1 はじめに

2026年3月31日をもってNTTドコモが提供する3Gサービス提供が終了します。詳細は下記のリンクから参照可能です。

NTT ドコモ公式情報

「FOMA」及び「i モード」サービス終了のご案内
https://www.docomo.ne.jp/info/3g_closed/index.html

IIJ 公式情報

NTT ドコモFOMA(3G)停波に伴うIIJ モバイルの継続利用につきまして
https://www.iij.ad.jp/svcsol/mobile-support/news/3g_closed.html

NTT ドコモFOMA(3G)停波につきまして(IIJmio モバイル タイプD)
https://www.iijmio.jp/info/iij/1712655772.html

NTT ドコモ3G サービス終了に関するモバイルデータ通信機能の対応
https://support.seil.jp/
→サポート情報→技術情報→NTT ドコモ3G サービス終了に関するモバイルデータ通信機能の対応

NTTドコモは2019年にサービス提供終了に関する情報を発表しており、遂に来年3月に迫りました。これにより、IIJを含むMVNO事業者の3G回線も利用不可となり、音声通話・SMS・データ通信に影響が及びます。

当然ながら、3Gにのみ対応する端末は利用できなくなりますが、4G(LTE)対応端末であってもこの影響で利用できなくなる可能性があることについて、あまり知られていません。

本稿では、なぜこのようなことが起こるのか技術的な解説をします。あまり期間的な猶予はありませんが、多くの方に3G停波により突然通信サービスが利用できなくなる問題を回避するための準備をしていただき、2026年3月末を乗り切る一助になれば幸いです。

4.2 なぜ3G停波が必要なのか?

3G停波で発生する問題の解説に入る前に、セルラー方式のモバイル無線技術の進化について説明します。2Gから続く、現在のモバイルの無線技術は1991年の2G導入から約10年おきに新しい無線規格が商用サービスに導入され、進化してきました(図-1)。

図-1 セルラー方式モバイル無線技術の世界でのサービス開始時期と利用期間

一方で、新しい無線規格が導入されると

  • 前世代の無線規格の機器への投資が大きく減り、既存設備の維持や保守のみになる
  • 結果、機器ベンダーが製品の製造を停止し、サポートも徐々に停止する
  • そのため、古い設備の維持や保守が年々難しくなる

という流れになるため、新しい無線設備への置き換えが必要となります。また、古い無線規格に比べると、新しい無線規格は限られた周波数資源をより効率的に使える技術が規定されているため、新しい規格に移行するのは自然な流れとなります。

そのため、どこかのタイミングで古い無線規格の利用を止めて、新しい無線規格に移る必要があります。3G停波がまさにこの状況となり、自然な流れとなります。図-1を補足する資料として、世界の端末ベンダーの業界団体GSAが公開している世界のキャリアの2G/3Gの停波状況の推移を示します(図-2)。2025年をピークとして2G/3Gの停止が相次ぎ、4G以降の無線世代に一気に移行します(図-2)。

図-2 引用元GSA、2G/3G sunset and implications for 5G Broadcast

一方で、新しい無線規格の導入初期では新しい無線網を使えるエリアが広くないため、過去の無線規格を利用してエリアを補完するように無線網が構築されるのが一般的です。この際、無線網間の連続性を保つため、コアネットワーク同士を連携させることで接続が切れずに、新旧の無線網をシームレスに移動が可能となります。

このような状況を想定して、端末は新旧の無線規格に対応するように作り込まれており、新旧の無線網が存在している状態では問題になりません。しかし、今回の3G停波のように古い無線網が廃止される場合に、この連携ができる前提で作られた端末では問題となります。以下の解説でこの問題の詳細について説明します。

4.3 3G停波による影響

前節でも述べましたが、端末実装の問題により3G停波で下記のような影響を受けます。

  1. (1)3Gにのみ対応の端末(4G非対応)の場合 -> 3G電波がなくなるので利用不可
  2. (2)3G/4G両対応の端末の場合 -> 4G電波があっても3G電波がないため利用できなくなる場合がある

上記の(2)の3G/4G両対応の端末の問題を更に分類すると、大きく分けて下記のようになります。

  1. (2-1)音声対応端末(スマートフォンなど)に起因する問題
  2. (2-1)端末が必ず最初に3G網に接続してしまう問題

以下の節ではそれぞれの問題について解説します。

4.4 音声対応端末(スマートフォンなど)に起因する問題

モバイルの無線規格を規定する3GPPの仕様では4G端末は大きく分けて2つのモード(UE usage setting)に分類できますので、それぞれについて解説します。

  1. (1)音声通信優先モード(規格上はVoice centric)
    • “絶対に”音声機能を利用できる網に接続するモード
      • スマートフォンの大半はこの実装になっています
      • VoLTE(4G無線を利用した音声通信)またはCSFB(CS Fall Back)と呼ばれる3G網に切り替えての音声通信のどちらかが利用できれば正常に動作
    • 一方で、このモードは4G網接続時にVoLTEとCSFBのどちらも利用できない場合に下記のような問題が発生します
      • この場合は、3GPP規格上の挙動として、4G網との接続を切り、音声が利用可能な別の網(3Gなど)を探しに行くモードに移行します
      • 接続可能な3G網の電波が見つからない場合は圏外が継続して、データ通信が利用できなくなります
      • 3G停波後に端末実装や通信サービスの制約の組み合わせで、この問題に陥る可能性があります
    • 3G停波後に問題になるケースは下記のものがあります
      • VoLTE非対応の4G(LTE)端末を利用の場合
      • VoLTE対応4G(LTE)端末を利用しているが、サービスがVoLTEに対応してない場合
  2. (2)データ通信優先モード(規格上はData centric)
    • データ通信端末(ルータ、USBモデム、通信モジュール)は大半がこちらの実装
    • 音声機能が利用できなくても(1)のように圏外にならない
    • 3G停波後に圏外になるような問題は発生しない

IIJでは3G停波後に、(1)の音声通信優先モードの端末で問題が発生する可能性があることを把握しているため、フルMVNOを利用して提供しているIIJモバイルサービス/タイプIでは、ネットワーク側でこの問題が発生しないような対処をすることを予定しています。

4.5 端末が必ず最初に3G網に接続してしまう問題

こちらの問題は音声通信優先モード以外の多くの4G(LTE)端末でも発生している可能性がある問題です。実装や接続設定の問題で、接続時に4G網でなく、3G網に最初に接続してしまう場合があります。このとき、一定時間経過後に4G網に接続が切り替わる挙動の場合が多く、この問題に気づけていない場合があります。

3G網と4G網の両方が使えている状態であれば、最初に3G網に接続し、しばらくすると4G網に切り替わる程度の問題で済んでいましたが、3G停波後は3G網がないため、4G網に接続できない原因となります(図-3)。

図-3 3G網に最初に接続してしまう問題

この問題は端末側に起因するものであるため、ネットワーク側では対応できず、端末を利用するユーザ側での対応が必須となり、このような事象に遭遇していた場合は早急に対応する必要があります。IIJが把握している範囲で、この問題がどのような原因で発生するかを分類すると下記のように分けることができます。

  1. (a)最初に必ず3G網に接続するように実装されている端末で、修正対応や設定変更が不可能な端末
    • 3G停波後にこの端末は利用できなくなるため、端末交換が必要となります
  2. (端末例)
    法人向けのIIJモバイルサービスで過去に販売していた510FU、520BU(USBモデム)がこれに当てはまります

  3. (b)最初に必ず3G網に接続するように実装されている端末だが、端末ファームウェアの更新で改善可能な端末
    • 古いファームウェアのままだと3G停波後に利用できませんが、端末メーカから最新ファームウェア入手して更新することで設定が変更され、4G網への接続が最初に行われるようになります。このような端末は3G停波後も利用することが可能です
    • このような対応で3G停波後に利用可能かは、端末メーカに確認の必要があります
  4. (端末例)
      • 富士ソフトFS040U(セキュア接続モード)
      • ネクスUX302NC、UX302NC-R
      • アットマークテクノArmadillo-IoT G4/G3M1

  5. (c)デフォルト設定では最初に3G網に接続するが、4G網への接続が最初になる設定変更が可能な端末
    • 何もしないと3G停波後に利用できなくなりますが、端末で設定変更を行うことで、3G停波後でも利用することが可能です
    • このような機能を持っているか、また、設定方法はどうすればいいのかについては、端末メーカへの確認が必要です
    • 以下はこの事象に当てはまる代表的な端末で、4G網への接続を最初にする方法となります
  6. (端末例)
    • Google Pixelシリーズ(APN設定のAPNタイプで“ia”設定の追加が必要)
    • Microsoft Surfaceシリーズ(APNの種類:インターネットおよびアタッチ設定が必要)

  7. (d)スマートフォンや通信モジュールのAPN設定の問題で3G網に最初に接続してしまう事象
    • 法人向けIIJモバイルサービスを利用するお客様から頻繁に申告がある問題です
    • IIJモバイルサービスの仕様としてAPN設定で、ユーザ名/パスワード/認証方式の入力が必須であり、設定されていないと接続できない仕様となっています
    • 一方で、様々な理由で端末が4G接続時にユーザ名/パスワード/認証方式の値を設定しない場合があり、この場合IIJ設備で接続が拒否されて、4G網への接続ができなくなります
    • 上記の理由で4G網への接続が拒否された後に、端末が3G網にフォールバックし、3G網への接続時にはユーザ名/パスワード/認証方式が正しく設定されるため、正常に接続が可能となります
    • 事象の詳細は紙面の都合で省きますが、4G網と3G網で初期接続時の方法が異なるために発生する事象となります
    • 以下は代表的な端末での対応方法となります
  8. (端末例)
    • スマートフォン(Apple端末全般)
      iOS APN構成プロファイルを利用することでこの問題の回避は可能です
    • 通信モジュール全般(Quectel EC25-Jなど)
      実装に依存するATコマンド(QuectelではAT+ QICSGP)で、事前に通信モジュールに、ユーザ名/パスワード/認証方式を設定することで回避可能です

4.6 むすび

2026年3月31日にNTTドコモの3Gサービス提供が終了した際に、4G(LTE)対応端末でも、4G無線網に接続できなくなる問題があることを本稿では解説しました。3G停波まで1年を切っており、時間的猶予がありませんが、本稿の後半で解説した事象は、気付いていないが発生している場合が多いため、本稿をきっかけとして改めて3G停波対応が大丈夫かを確認していただき、問題なく乗り切れることを切に願います。

執筆者プロフィール

大内 宗徳 (おおうち むねのり)

IIJモバイルサービス事業本部 MVNO事業部 基盤開発部 プラットフォーム開発課 シニアエンジニア。
モバイルに関する先端技術の調査、研究とそれを活用したサービス開発に従事。

4. フォーカス・リサーチ(2)
3G停波とMVNO

ページの終わりです

ページの先頭へ戻る