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Internet Infrastructure Review(IIR)Vol.58
2023年3月22日
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目次

エグゼクティブサマリ

2022年11月にOpenAIから公開されたChatGPTが大きな反響を呼んでいます。ChatGPTは、名前から推測できるようにチャットボットの一種であり、チャットボットは従来から多くのシーンで利用されています。ただ、ChatGPTは、幅広い分野の質問に対して自然な受け答えができる、過去の会話を記憶している、作文やプログラミングができるなど、従来のチャットボットに比べて高度な能力を持っていることで注目されています。

筆者も試用したところ、先に挙げた特徴はまさにそのとおりで、驚くばかりでした。知らない事柄を調べる際には、検索エンジンから始めるのが一般的ではありますが、ChatGPTに質問を投げ、その回答を更に深堀して質問していくことで、検索エンジンを用いた調査よりも効率的に結果が得られるのではないかと感じました。ChatGPTが時には平然と誤った回答をするとの指摘はありますが、検索エンジンでも誤った情報が提示されることはあり、受け取った情報の真偽を見極める能力が要求されるという点は、従来と変わりないと思います。

インターネットに溢れる膨大な情報を整理して、必要なものにアクセスしやすくするという役割は、長らく検索エンジンが担ってきました。その裏ではAIが使われていたものの、利用者のインタフェースがAIチャットになり、必要な情報の要約まで含めてAIで処理されるというのは新鮮です。既にインタフェースをチャットにして、OpenAIのGPT-4を利用する検索エンジンも出てきており、長らく続いたユーザのインターネットにおける情報収集の体験が変わるのではないかという可能性を感じます。

「IIR」は、IIJで研究・開発している幅広い技術を紹介しており、日々のサービス運用から得られる各種データをまとめた「定期観測レポート」と、特定テーマを掘り下げた「フォーカス・リサーチ」から構成されます。

1章の定期観測レポートは、SOCレポートです。IIJのSOCでは、自社のサービスを運営することから得られる情報に加え、独自で収集している情報、社外から得られた情報の分析を行っています。本レポートにおいては、2022年におけるセキュリティの主要なトピックを振り返ると共に、その中でIIJのセキュリティアナリストが注目したEmotet、VPN機器の脆弱性に加えて、SOCで多く観測された4つの脆弱性について解説します。

2章のフォーカス・リサーチでは、情報通信産業に欠かせない電力を取り上げました。情報通信技術の発展に伴い、データの通信量・処理量が急増する中、環境保護の観点から電力使用量の抑制が強く求められることは言うまでもありません。日本における電力市場の課題と、データセンターを運営する電力の需要家としてのIIJの取り組みを説明します。

3章のフォーカス・リサーチでは、IIJの配信センターである「IIJ Studio TOKYO」の紹介と、そこで使われている技術を解説します。ネットワークと端末の進化により、様々な場面で動画配信が活用されるようになりました。映像業界と情報通信業界が交わるのが、インターネットの動画配信です。IIJ Studio TOKYOを含むIIJの映像配信のチャレンジについてご紹介したいと思います。

4章のフォーカス・リサーチは、IIJの創業30周年に合わせて、事業の根幹となるバックボーンネットワークの変遷を紹介します。IIJの創業以来、インターネットは拡大し続けており、IIJのネットワークも規模が大きくなるだけでなく、可用性・品質・セキュリティへの要求も格段に高まっています。それらに対して、IIJがネットワークをどのように進化させてきたのか、その記録を「IIR」に残すこととしました。

IIJは、このような活動を通してインターネットの安定性を維持しながら、日々、改善・発展させていく努力を行っています。今後も企業活動のインフラとして最大限にご活用いただけるよう、様々なサービスやソリューションを提供し続けてまいります。

島上 純一

執筆者プロフィール

島上 純一 (しまがみ じゅんいち)

IIJ 取締役 CTO。インターネットに魅かれて、1996年9月にIIJ入社。IIJが主導したアジア域内ネットワークA-BoneやIIJのバックボーンネットワークの設計、構築に従事した後、IIJのネットワークサービスを統括。2015年よりCTOとしてネットワーク、クラウド、セキュリティなど技術全般を統括。2017年4月にテレコムサービス協会MVNO委員会の委員長に就任。


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