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Internet Infrastructure Review(IIR)Vol.58
2023年3月22日
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目次

3. フォーカス・リサーチ(2)

新設「IIJ Studio TOKYO」将来への架け橋

3.1 はじめに

ISPの会社として認知されているIIJですが、実は1990年代から映像配信事業を行っています。ここ数年は「IIJ MediaSphereサービス」をはじめ、大規模コンテンツ配信サービスなどの提供を積極的に行い、より多様化するお客様のニーズに応えられるよう、サービスの拡充を進めてきました。そして社会情勢が大きく変化した2020年以降、オンラインの配信が増え、それに伴い多くの企業が動画配信を行うようになってきています。IIJも自社の決算発表会など社外に向けた配信を行い、企業のブランディングにもつながる映像・音声の品質に対して高い評価と、同じように配信を実施したいという声も頂きました。決算発表の配信では、会議室に仮設したカメラやスイッチャー(映像信号を切り替える装置)を用いて広報部や複数部署のメンバーで運営するという、現場のスタッフの知識と経験をフルに活用し、安定した高品質の配信を実施していました。ただ、配信場所が普通の会議室だったこともあり、外から入る雑音や突発的なアクシデントなどに悩まされることが度々あったのです。更に、IIJは毎年春に日本最大級のクラシック音楽の祭典「東京・春・音楽祭(以降、春祭)」の配信を行っており、2021年の開催から有料ライブストリーミング配信を行っています。2021年は上野文化会館内に仮説の配信センターを構築し、複数の会場からの映像を文化会館で受けとり、そこから配信する形をとっていたため機材の運搬や配信センターの構築など、配信以外のところでかなりの負荷がかかっていました。そのため、翌年の2022年は、配信センターをIIJ飯田橋オフィス内に構築し、上野文化会館のホールに設置したIPリモートカメラを飯田橋からコントロールし、現地からの映像を飯田橋のサブコントロールルームへ送り配信する「リモートプロダクション配信」を実現しました。

ただ、2021年及び2022年ともにその都度配信センターを構築する作業が必要で、場所の確保や機材の調達など様々な課題もありました。こうした社内外からの映像配信の需要・ニーズの高まりを受け、更に、より多くのお客様からの要望にも応えられるよう、常設の配信センターを構築し、高品質で安定した配信に対応できる常設スタジオの検討を開始したのです。

そして2022年10月、ついに「IIJ Studio TOKYO」が飯田橋に誕生しました。ただし常設のスタジオができただけでは高品質の配信を行うことはできません。安定した映像制作・配信環境を構築するには長時間のエージングや検証、オペレーターの熟練度や経験、そしてチームワークも含め運用に向けて非常に多くの作業と時間を要します。

更に社内には映像制作に関する知識を有する者も多くなく、オペレーターの育成や機材の扱い方、ケーブルの巻き方、求められる映像・音声の品質のレベルなども含め一からのスタートになりました。

2022年度は主に社内の配信や映像収録を中心に設備・機器の知識や使い方、運用体制の構築など手探り状態で進めてきました。ただ、社内で完結していては独りよがりになってしまいます。来年度以降のサービス化を想定し、よりよいスタジオ運用を目指すため、スタジオ作りと同時に社外とのコミュニケーションを積極的に行ったり、内部からのフィードバックや意見を集めるなど、社内外のコミュニケーションの活性化と外部パートナーとの連携強化を進めています。

また、本章で紹介する映像業界の課題にも挑戦すべきと考えました。IIJらしさ、IIJが作るスタジオとはどのようなものかという点から、IT・IPをベースとしたリモートプロダクションにも対応でき、モバイル回線を利用した中継映像の利用なども可能なスタジオの計画を行いました。

本稿では、現在の映像制作にIPを用いることで得られるメリットや課題、そして「IIJ Studio Tokyo」の設備について紹介します。

3.2 IIJ Studio TOKYO 設備の概要

ここではIIJ Studio TOKYOの設備について説明します。

IIJ Studio TOKYOには図-1のとおりスタジオ(写真-1)と6つの部屋があり、部屋同士が10Gbpsまたは1GbpsのネットワークでIP接続されています。スタジオシステムをIPで構成するメリットは、光ファイバーケーブル1本でスタジオサブ(写真-2)と接続可能な点です。例えば別フロアの大会議室などにカメラを設置することで、会議室を簡単に仮設スタジオに変えることができます。また、撮影の規模や観客の有無など目的に応じて柔軟な撮影、会場の構築ができるようになります。更に、リモートプロダクションの要素を持ち合わせることで、準備に多くの時間を要する複数カメラの画角や色味の調整をスタジオサブ内で一元的に管理でき、現地のカメラマンやオペレータの削減や作業負担の軽減などにもつながります。

図-1 スタジオ配置図とネットワーク構成

写真-1:スタジオ

写真-2:スタジオサブ

図-2 構成例
※IP利用のみを想定した図です。SDIも併用してオペレーションすることも可能です。

スタジオ
カメラ

スタジオには撮影に使用するカメラが全部で6台(SONY社のプロフェッショナルカムコーダー2台とPanasonic社のリモートカメラ4台)あり、様々な画角で映像制作できます。基本コンセプトとしてリモートカメラをメインにすることでカメラオペレーターの人員不足にも対応します。そしてそれらのカメラで撮影するスタジオでは、利用者の要望に合わせて様々なシチュエーションに対応できるよう白壁や黒カーテン、クロマキー合成できるようグリーンカーテン・グリーンマットを用意しています。また、撮影に欠かせない照明はBluetooth接続でiPadから光量や色温度のコントロールが可能です。

マイク

ワイヤレスマイクは安定性の観点から混線防止対策として、免許が必要なA型ラジオマイクを利用しています。ピンマイクとハンドマイクで、目的に合わせて使い分けられるようにしています。また、万が一のトラブルに対応するために無指向性コンデンサーマイクを天井に設置し、スタジオ内の音声を確実に収録可能にしています。

スタジオサブ
スイッチャー

スタジオサブでは、IPスイッチャーとしてNewTek社のTriCaster 2 Eliteを採用しています。SDIも8系統、更にNDIを32系統入力できます。そのため配線の省略化により、映像ソースを送出する機材の設置場所や数の自由度を高めることができます。

また、ソフトウェアスイッチャーならではの機能「バーチャルセット」を用いることで、1台のカメラで空間に動きのある表現が可能となり、映像制作の幅が広がります。他に、サブスイッチャーとしてPanasonic社のスイッチャーも設置しているため、スタジオでの撮影をメインスイッチャーで実施しながら、サブスイッチャーでリモートプロダクションを同時に行なうといった複数のオペレーションができます。

デジタルミキサー

スタジオで扱うオーディオプロトコルには「Dante」を採用しました。Dante機器で構成することでDante Controllerやデジタルオーディオミキサーでのルーティング設定をPCアプリ上から簡単な操作で切り替えることができ、物理配線を変えることなく必要な音源を必要な場所に素早く送出できます。

マシンルーム

すべての映像信号をマシンルームに集約することで、無駄な配線を減らしました。必要な部屋や機材に適切な映像のルーティングを効率的に行えます。また、外現場からの中継も容易に実施できるよう、小型の映像中継機「LiveU」の受信機を常設しており、春祭などでの利用を想定しています。また、インターネット配信用の「Elemental Live(エンコーダー)」も常設し、スタジオからの配信、外部からの映像入力などに利用できるようになっています。更に、インターネット回線は10Gbpsの専用線を引き込み、IIJバックボーンと直結することでIIJの強みを活かした通信環境を提供しています。

録音ブース

IIJ Studio TOKYOには音声収録専用の部屋があります。スタジオでの収録に合わせてナレーションを入れたり、ウェビナーなどの司会の音声を事前に収録することが可能です。音声収録に最適な環境を提供するため、床や壁の音の反響を抑えるよう考慮した作りになっています。既存の空調設備を専用ダクトに取り換えたり、入った瞬間に耳に入る音の質が変わるのが分かるほど部屋の形や吸音材の設置位置にも配慮しました。

写真-3:録音ブース

試写室

100インチの大型スクリーンで7.1.4chのDolby Atmos対応の音響設備で作品を試写できます。また、出演者の控室や対談などの撮影場所としても利用できます。

写真-4:試写室

控室

神楽坂方面を見渡せる眺望で出演時間までリラックスできます。また、化粧台や着替え用のカーテン、大きな収納スペース、冷蔵も完備しています。こちらもインタビューや対談、ディスカッションなどの撮影も可能です。動画だけではなく、スチルの撮影にも使えます。

写真-5:控室

運用室

運用室はスタジオで使う機材の保管や検証、撮影・収録した映像の編集など、スタジオ運用の作業場所として用意しています。春祭などの大規模配信では複数同時に配信・監視対応しなければならず、サブに2系統、運用室に2系統設置し、最大4つの配信を同時に行うことができるように機材を用意しています。その為の大きなモニターを設置して配信ステータスを確認できる部屋となっています。

写真-6:運用室

3.3 なぜIPなのか?映像業界の課題とIPのメリット

映像業界では、かねてよりベースバンド信号(コンポジット信号やSDI信号など)を利用した映像制作が主流で、50年以上も変わらずこのベースバンドスイッチャー(電子回路設計)を利用した「Live映像制作」が行われています。かつてアナログ回路のスイッチャーが使われていた頃は、電源投入後、数時間経たないと信号が安定しない・映像レベルが変わってしまうなどの特徴があり、扱うには熟練の経験と技が必要でした。それから数十年を経て登場したデジタルスイッチャーでは電源投入後から安定したオペレーションが可能になりましたが、ここに来て、8kなど更なる映像の高画質化への対応で、スイッチャーに接続する12G同軸ケーブル(SDIケーブル)の伝送帯域やケーブル長に限界点が見え始めています。

写真-7:同軸ケーブル

写真-8:光ケーブル

一方、IPの世界では10G、25G、100Gと通信帯域が格段に向上し、進化のスピードに差が出てきているのが現状です。このように「Live映像制作」は数十年を経て変革の時代を迎えています。

旧来のSDIはIn・Outどちらか片方向のみの伝送しかできませんが、IP映像伝送は1本のケーブルで複数の映像を送受信することが可能です。また、圧縮技術を用いて容易に映像の送受信が行え、限りあるリソースの中で柔軟に設計することができます。これは、大規模になればなるほどルーティングスイッチャー(映像を各機器へ相互的に分配する装置)やケーブルの配線本数などシステム構築に大きな影響を与えます。

圧縮映像は、既に「ポストプロダクション映像制作」領域で利用されています。2000年頃以降にリニア編集(ベースバンド編集)からAvid / MediacomposerやApple / Final Cut Pro などPCベースでのノンリニア編集(ファイルベース編集)へ変革し、現在ではノンリニア編集が定着化しています。しかし、「Live映像制作」の分野では信頼性やノウハウが蓄積されておらず、圧縮映像やIP映像をメインに「Live映像制作」が行われていないのが現状です。「Live映像制作」がIPやPCベースで行われない要因としては、以下のような項目が課題としてあります。

  • NDIを含むIPスタジオのデメリットや課題

    - IT技術者の不足

    - SDIとは異なり接続しただけでは信号のやり取りができない・設定が必要

    - 安定性への不安や監視の複雑さなど未経験の部分がある

    - 慣れ親しんだ作法やケーブリング・周辺機器などラインナップが未成熟である

    - 情報不足

IIJでは、映像が得意な人員とIPが得意な人員が協力することで上記のような課題に取り組み、安定して使いやすい環境の提供を目指しています。

「Live映像制作」で採用する代表的なプロトコルはいくつかあります。今回のスタジオには圧縮技術とIP技術の良いところを掛け合わせたNDI(Network Device Interface)を採用しました。次項ではNDIの特徴やメリットについて述べます。

3.4 NDI(Network Device Interface)のメリット

NDIは8bitから12bitまでサポートされています。アルファチャンネル(RGB以外の透明度)の採用などにより合成作業に対しても柔軟で、ノンリニア編集機とも親和性が高く、ポストプロダクションワークフローへスムーズかつ容易に引き継ぐことができます。リモートプロダクションへの発展などを見据えて、現時点ではNDIが将来性、汎用性、コストパフォーマンスに優れていると考えました。また、NDIは様々なデバイスやOSとのシームレスな連携を得意としており、Teamsアプリやスマートフォンでも扱える汎用性の高さを持っています。放送から一般ユーザーまで垣根なくデバイス間でやりとりが可能なプロトコルとしてIPの利便性を体感するには都合の良いプロトコルであると考えたため「IIJ Studio Tokyo」での主要プロトコルとして採用に至りました。

TV番組制作でもZoomやスマートフォンを利用し遠隔地から出演する場面では、IP映像を一旦SDIに変換し制作しているのが現状ですが、IPのまま制作を行った方が効率的であるとも考えられます。しかしながらIPをメインに制作することは容易ではありません。数十年に渡りベースバンドで培ってきたノウハウや作法・安定性・オペレーションを刷新するには根気と時間、またあらゆる人員の理解が必要となります。

表-1 SDIとIP映像の比較

筆者は前職で10年近くの歳月を費やしてリニア編集からファイルベース編集への移行・定着までの変革業務(デモンストレーション、構築、アフターサービス)を行ってきましたので、「Live映像制作」におけるIP化も様々な苦労があると考えています。

3.5 将来の映像制作

将来的にはクラウド上に制作環境が構築され、SDIなど専用のインタフェースなしに映像をやり取りできる「Live映像制作」が可能になると考えます。しかし、すべてがクラウド上で完結するというよりは、クラウド上で行った方がメリットの多い部分が集中して管理されるようになり、「ポストプロダクション映像制作」環境との融合が進むと感じています。NDIは低CPUと1Gネットワークを用いてクラウド上で扱いやすいプロトコルで、内部処理には好都合かつ安価に映像のやり取りが可能と考えます(図-3)。

図-3 将来的なIT放送局の構想イメージ

IIJ Stuido TOKYOでは、まずローカル環境に近い状態からIPベースの制作環境を整え、安定性やレイテンシーなどクラウド上でもボトルネックになってくるであろう課題に対して体験、体感しながら利用環境にマッチする「IT-Live映像制作」の取り組みを始めています。また、IIJが開設した白井データセンターキャンパスでは、ローカル5Gを用いた4k NDI伝送での画質、遅延量の体験なども行える研究拠点(白井ワイヤレスキャンパス)の運営を開始しており、他にも様々な取り組みを行ってきました。

3.6 過去の実績や取り組み

2019年実績

ST2110非圧縮リモートプロダクションにおける放送局向けPoCに複数参加しました。各社メーカがそれぞれの放送機器を持ち込み規格の解釈や通信状況の確認を行いながら映像確認を行っており、多くの課題や情報を共有することができました。

2020年実績

ローカル5Gを利用した4k NDI伝送デモ設備を白井データセンターキャンパスへ構築し以下のような特徴を体験いただける設備を公開しています。スタジアムや工場などリモートカメラの移動が頻繁な環境やセキュリティに課題を抱えている方にご覧いただきたい設備です。

  • 低遅延性・高画質性を体感可能な双方向なネットワーク
  • 免許周波数帯を用いるため通信品質が安定している
  • Wi-Fiに比べてセキュアかつ低遅延

写真-9:白井ワイヤレスキャンパス
ローカル5Gを用いて4k NDIの画質と低遅延性を実現

2021年実績

2021年の春祭では公演会場のひとつである文化会館内にNDIを利用したサブコントロールルームを仮設し、リモートプロダクション設備を構築し公演を配信しました。会場とサブコントロールルームはLANケーブルのみで接続し、リモートカメラ3式から伝送される映像・音声・タリー信号をケーブル1本で送受信可能なインフラを作り上げました。通常のベースバンドで同様に配線を行う場合はそれぞれの機器に専用のケーブルを配線する必要があるため、作業的な労力や接続ミスが発生しやすくなりますが、IPであれば配線のミスや作業負荷を容易に減らすことができます。ネットワークやカメラ機器も安定しており、NDIの画質や応答速度など含めて本番環境においても実用可能と判断、IIJ初のNDI実戦投入となりました。ただ、実際の現場では、会場を期間中全て押さえているわけではないため、電源やネットワーク線の配線と撤収を公演ごとに行わなければなりません。サーバ機器もほぼ毎日のようにシャットダウンさせる必要があり、動作確認の軽減など安定運用の観点から常設のサブコントロールルームの必要性を感じた最初の配信となりました。

写真-10:パナソニックPTZリモートコントローラーとリモートカメラの実機

2022年実績

2022年の春祭ではSRT/H.265を利用した4会場同時リモートプロダクション配信を行いました。NDIと異なる点としてはレイテンシーが大きいため、SRTの接続モードを”コマ落ちするが応答性能が良い”「カメラ調整接続モード」と”バッファサイズを大きくし安定した伝送が可能な”「公演接続モード」の2種類を事前に設定し、本番前に瞬時に切り替えることで対応を行いました。会場からの映像は5秒の遅延で上野から飯田橋のエンコーダーに届くように調整し、安定した映像配信を行いました。

写真-11:PTZリモートカメラ

写真-12:PTZリモートカメラ(右)とL3VPNを構築させたSEIL(左)

写真-13:仮設サブコントロールルーム

図-4 文化会館内でのネットワーク構成

3.7 「IIJ Studio TOKYO」構築時の苦労した点や工夫

これまでの様々な試みや経験から常設スタジオの必要性、有用性を認識し、常設のスタジオを構築することになりました。スタジオ稼働開始直後はTriCasterがクラッシュするなどの挙動も見られました。また、アップデート作業や設定変更、接続方法の変更など製品単体で手を加えなければならないといった製品の癖を知る必要がありましたが、現在では非常に安定した動作をしてくれています。またNDIの一部をマルチキャストに設定するなどしてネットワーク全体の帯域を有効利用するように設定を組み替えるなど細かな調整を行っています。また、メンテナンス性や対障害に対してはPCベースで構成されたTriCasterの起動イメージをフルバックアップし、大幅なシステムアップデートやシステム変更時には定期的にバックアップを行うことでトラブル時の早期リカバリーを可能にしています。また内部で作成したTriCasterのSessionデータはファイルサーバに同期させ随時バックアップを取り、万が一TriCasterが起動しなくなった場合にはTriCaster本体を交換することで即時復帰できるように定型化・文章化を行っています。特に重要となるのが手順書やトラブル時の対応情報は、社内で様々なツールを利用し日々情報の積み上げを行なっています。

3.8 後書

「夢物語のようなことが本当にできるのか?」先端技術を技術的な面からの「できる・できない」だけではなく、実際のオペレーションレベルまで落とし込み運用できるようにすることも重要です。専任のスタジオオペレータは20年も30年も専任で業務を行っているのでとにかく操作が早いです。ダイレクト感がなく応答性の悪いシステムは「使えない」と即判断されてしまう傾向にあり、どの程度の制作であれば耐えられるのか、どういった案件で特徴を活かせるのか見極めることも今後の方向性を決める上で大切なことであると考えます。

IIJのIPスタジオ「IIJ Studio TOKYO」はまだ始まったばかりですが、先端の技術を取り入れながら映像制作の基本を習得し、映像制作分野におけるIPの可能性や安定性の向上、管理、監視方法などの検証も行いながら技術革新を向上させています。既に、優秀なオペレータの入社やIIJエンジニアリングからの出向、また外部取材やコンサルタントの方の協力など、スタジオに共感いただける方々のコミュニティが始まっており、非常に良い流れが生まれています。

今後、IIJでは映像業界を含め様々な業界に対してもネットワークと人がつながる社会に貢献できる活動を進めてまいります。

執筆者プロフィール

角田 敦

角田 敦 (すみた あつし)

IIJネットワーク本部 xSPシステムサービス部 配信ビジネス課。
前職では映像総合商社にてセールスエンジニアとしてポストプロダクションや放送局向けにノンリニア編集システムの導入やサポートに従事。2019年7月、IIJに入社。ST2110リモートプロダクションPoCなどに参加、オリンピック関連の配信や現時点での春祭配信システムにおける映像制作部分の基礎設計から運用までに携わり現在に至る。

今西 亮太

「3-2 IIJ Studio TOKYO 設備の概要」担当
今西 亮太 (いまにし りょうた)

IIJネットワーク本部 xSPシステムサービス部 配信ビジネス課。
2015年、IIJエンジニアリング入社と同時にIIJの配信事業に携わり、CDNサービスの運用・保守やイベントの収録・配信業務を担当。

3. フォーカス・リサーチ(2) 新設「IIJ Studio TOKYO」将来への架け橋

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