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Internet Infrastructure Review(IIR)Vol.50
2021年3月30日
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目次

エグゼクティブサマリ

一部の国では新型コロナウイルスに対するワクチン接種が開始されてはいるものの、ウイルスの変種も確認され、依然として厳しいロックダウンが続いている地域もあります。日本でも、2020年末に感染者が大幅に増加し、年明けには2回目の緊急事態宣言が発令されるなど、まだ予断を許さない状況です。

新型コロナウイルスにより世界的に人の活動が制限されるなか、インターネットに代表される情報通信技術が社会生活を支えていると実感する毎日です。外出を制限された人の娯楽として動画が消費され、インターネットのトラフィックが大きく伸びたことは「IIR」でも紹介しました。企業がリモートワークを導入し、オンラインでの執務が増えていることは言うまでもありません。フードデリバリーの風景を見ることが増えたと感じている方も多いでしょうが、その注文の多くはインターネットで行われ、決済もオンライン化されています。オンラインショッピングの取扱高も増加していると聞きます。ただ、いずれも以前から存在するサービスであり、これらは、利用者に新しい感動や体験を与えているのか、コロナ禍を契機に社会に浸透したに過ぎないのではないか、という見方もあるかもしれません。

日本でもようやくワクチン接種が始まろうとしており、ポストコロナを見据える段階にきています。世界にはコロナ禍以外にも課題が山積しており、SDGsのように共通の課題も提示されています。そのような大きな社会課題をいかに解決していくのか、それに対し情報通信技術やインターネットがどのように貢献できるのか、情報通信に携わる一員として考えていきたいと思います。

「IIR」は、IIJで研究・開発している幅広い技術を紹介しており、日々のサービス運用から得られる各種データをまとめた「定期観測レポート」と、特定テーマを掘り下げた「フォーカス・リサーチ」から構成されています。

1章の「定期観測レポート」は、SOCレポートです。IIJのSOCでは、自社のサービスを運営することから得られる情報に加え、独自に収集している情報、社外から得られた情報の分析を行っています。2017年からは「wizSafe Security Signal」を通じて、私たちが観測した脅威やセキュリティに関するトピックを発信していますが、本レポートでは2020年のセキュリティインシデントの動向を振り返っています。IIJのSOCが注目したセキュリティインシデントとして、SSL-VPN製品の脆弱性を狙った攻撃、EmotetやIcedIDによる攻撃などを取り上げています。

2章の「フォーカス・リサーチ」では、RPKI (Resource Public-Key Infrastructure)を解説しています。インターネットが世界的に社会のインフラとして機能している今日でも、インターネットのルーティングシステムは経路ハイジャックやオペレータの設定ミスに対して盤石とは言えません。RPKIは、それをより強固にするために、インターネット上で交換される経路情報などの正当性を電子証明書によって検証する仕組みです。本章では、RPKIの概要や動向と共に、IIJの取り組みを紹介しています。

3章の「フォーカス・リサーチ」は、放送制作におけるネットワーク利用についてです。2020年はオリンピックというビッグイベントが予定されていた年であり、多くの職場でリモートワークが進んだ年でもありました。本章では、オリンピックのようなイベント中継で活用できるIPネットワークを用いたリモートプロダクションの仕組みや、放送制作の場におけるインターネットを活用したリモートワークの実証実験について紹介し、これからの展望について述べています。

IIJは、このような活動を通してインターネットの安定性を維持しながら、日々、改善・発展させていく努力を行っています。今後も企業活動のインフラとして最大限に活用いただけるよう、様々なサービスやソリューションを提供し続けてまいります。

島上 純一

執筆者プロフィール

島上 純一 (しまがみ じゅんいち)

IIJ 常務取締役 CTO。インターネットに魅かれて、1996年9月にIIJ入社。IIJが主導したアジア域内ネットワークA-BoneやIIJのバックボーンネットワークの設計、構築に従事した後、IIJのネットワークサービスを統括。2015年よりCTOとしてネットワーク、クラウド、セキュリティなど技術全般を統括。2017年4月にテレコムサービス協会MVNO委員会の委員長に就任。


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