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Internet Infrastructure Review(IIR)Vol.32
2016年8月29日
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目次

3.2 データセンターに求められるもの

インターネットサービスを実現するために最低限必要なものはインターネット回線とサービスを動かすためのITサーバです。それだけでインターネットに接続されたすべてのユーザに対してサービスを提供できることがインターネットの大きな利点です。しかし、サービスを継続的にかつ大量のユーザに対して提供するにはもうすこし検討が必要です。例えば障害時(停電、インターネット回線の中断、回線収容機器の故障)を想定した冗長化、ITサーバを多数収容するラック設置場所の床荷重対応、機器の排熱を処理する空調容量の増強、と一般の住居やオフィスでは対応が難しいことがたくさんあります。

安定したインターネットサービスを実現するための機能を提供するのがデータセンターです(※1)。データセンターは大量のITサーバを安全かつ継続的に稼働させることを目的として専用に設計された設備なので、前述した問題を一挙に解決できます。空調システム、電力システム、外部との接続性などの要素が冗長化されており、もしデータセンターの一部が故障したとしても運用を継続できます。また、厳密な入館管理などの物理的なセキュリティや機器状況の監視、IT機器専用の消火設備による機器保全といった付加サービスも提供されています。

データセンターに求められているのは「安定した運用」ですが、現在の先進的なデータセンターにはそれ以外の特性も期待されています。この10年程のインターネット向けのデータセンターの技術的発展のキーワードとして「効率化」と「高密度化」があります。この2つは「クラウドコンピューティング」の発展とも大きく関連しています。

データセンター利用の分類として「ホスティング」や「ハウジング/コロケーション」という用語が利用されます。機材の所有権の違いはありますが、どちらの場合もデータセンターの役割は「お客様の利用する機材を設置する」ことです。これらの場合、データセンターの主なサービスは設置機材の周辺環境を整えることです。契約がある限りは、機材の稼働状況などに関わらず、極端な例を挙げれば実際の機材が存在していなくても、空調や電力などのサービスを提供し続ける必要があります。

それに対して「クラウドコンピューティング」を主目的としたデータセンターでは、フロア全体、もしくは、データセンター全体が1つのクラウドサービスのために利用されることがほとんどです。1つのサービスもしくは運用者によってデータセンターが占有されるため、データセンターと機材の運用が一体化されることが特徴です。一体化されることで今までのデータセンターとは異なる運用手法や効率化手法が適用できます。例えば、通常よりも高い温度で動作するITサーバを選択して、あまり冷やさなくても良いデータセンターとして建物や冷却設備を始めとする諸々の設計条件を変える、といったことや、小さなバックアップ電源を搭載したITサーバと専用の電源管理ソフトウェアを組み合わせることで、通常のデータセンターでは必須である高価な電源バックアップ設備(大規模バッテリーや自家発電装置)を排除するといったアグレッシブな試行がなされている例もあります。このように、クラウド目的のモダンなデータセンターは単なるITサーバを収容するための設備ではなく、収容したサーバとデータセンターが一体となった有機的なシステムとして捉えるほうが適切になりつつあります。

  1. (※1)広義のデータセンターは「計算機設備を収容する建物」全般を指しますが、ここではインターネット向けデータセンターに限定して扱います。
3.技術トレンド

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