ページの先頭です
仮想環境において、位置管理が困難な仮想ディスクの実データ配置を柔軟に制御できる
ストレージシステム「UKAI」(※1)の研究をご紹介します。
もはや仮想化という言葉から新しい響きを感じることも少なくなってきました。今や仮想化技術はサービスを支えるための要素技術の1つとして重要な地位を占めています。もっとも、仮想化技術自体は新しいものでもなんでもなく、コンピュータが実用化された頃から様々な場面で利用されてきました。今では携帯電話用OSにすら実装されているマルチタスク技術は、最初は高価な物理CPUを仮想的に複数のプログラムで平行利用するために考えられたものでした。また、広くエンタープライズサービスで使われているJavaも、Java仮想マシンを活用する一種の仮想化技術と言えます。それにも関わらず、近年仮想化が大きく注目されたのは、普段利用しているサーバ環境を、許容できる速度で仮想マシンとして実行できる目処が立ったからです。
仮想マシンが実用的に運用できるようになったことで、ネットワーク上で提供されるサービスを仮想機材で構成する場面もでてきました。仮想化技術を利用することで、物理マシンを使っていたときには難しかったサービスの迅速な展開、高負荷時の緊急設備拡張、また利用減に伴う設備の縮退などが比較的簡単に実現できるようになります。もちろん、物理マシンを直接使う場合よりも性能が劣りますが、その差と運用の容易さが釣り合う時代になったと言えるでしょう。仮想マシンが物理マシンの性能に追いつくことはありませんが、基礎性能が向上するに従い、多くのサービスの要求品質を満たす仮想環境がいずれ実現されるであろうことは想像に難くありません。もはやCPUをひとりで占有するアプリケーションがほとんど存在しないのと同様に、一台のハードウェアの上に直接サービスOSが載ることはなくなるでしょう。一部の特殊な用途を除けば仮想マシンがサービス基盤の基本部品になる時代がやってきます。
仮想基盤を効率的に運用するための最初の一歩は仮想マシン専用のデータセンター構築です。IIJの松江データセンターパーク(※2)はそういったデータセンターの1つで、IIJのクラウドサービスIIJ GIOの基盤として利用されています。データセンターの効率をあげる手法の1つに大規模化が挙げられます。しかし、日本のように国土が狭い環境や、大規模化に見合う需要が即座に見込めない場合に大きな投資をして巨大なデータセンターを建設することは困難です。そこで、地理的に独立した中規模のデータセンターを仮想的に大規模データセンターとみなして運用する「仮想データセンター」の考え方がでてきます。分散したデータセンターを横断して基盤サービスを構成する場合、地理条件やネットワーク遅延を考慮して仮想資源を効率的に配置運用しなければなりません(図-1)。今後は仮想資源を柔軟に配置、再配置するための仕組みが重要になってくるのです。
ページの終わりです