株式会社スガテック 様

衛星通信を経由し、社内ネットワークを接続
回線が敷けない拠点と本社で同レベルのインフラを実現
Topics
導入前の課題
対応と決め手
衛星通信で拠点ネットワークと本社ネットワークとの相互接続を実証し成功
検証はどのように進められましたか。
吉住氏
衛星通信を介したVPN接続を検討していた頃、IIJから営業の電話をいただきました。それまでIIJと直接の付き合いはなかったので偶然の出会いでしたが、衛星通信のネットワークにおける悩みを相談してみました。すると、IIJでも衛星通信サービスの検証を進めていると聞き、衛星通信を介してVPNを利用した社内ネットワークへの接続の可能性について検討してもらいました。IIJ開発のルータ「SEIL(ザイル)」を提供する「IIJマルチプロダクトコントローラサービス(以下、MPC)」を用いることで、既存の社内ネットワークに相互接続する形で理論的には実現可能だろうという返答でした。
笠井氏
衛星通信サービスの検証は、スガテックでも始めようというタイミングでした。そこで最初は、IIJも参加する形でプラント現地での衛星通信サービスの検証を行うことにしました。社内ネットワークを収容する拠点とそれ以外の拠点の間を衛星通信サービス経由で接続する実証を行いました。拠点にはSEILの検証機を持ち込んでもらいました。
実証のポイントは、IPアドレスが動的に設定されるIPv6ネットワークでIPsec VPNを構築することでした。MPCが備えるIPアドレスの自動追従機能「フロートリンク」を使うことで、衛星通信を介してもIPアドレスの変動問題に対応できることを証明し、実証は成功しました。
吉住氏
2023年の初頭から検証を進め、成功した後に衛星通信サービスの本格導入とIIJによるMPCとのネットワーク構築を進めました。2拠点の実証実験から始め、12拠点まで導入を進めていき、2024年4月に本番環境が稼働して、移行が完了しました。

導入の効果
拠点設備から社内ネットワークへの通信がストレスフリーに
衛星通信サービスを利用した拠点間ネットワークの評判はどうでしょうか。
吉住氏
稼働後に1件もクレームがないことが評価のすべてだと思います。旧ネットワーク運用時代には、「つながらない」「遅い」といったクレームが頻発していたことを思うと、こんなに手離れのいいネットワークが構築できたことには驚くほどです。コスト的にも衛星通信サービスはホームルータと大差がなく、動画やCADなどの大容量データも安定してやり取りできています。
新谷氏
衛星通信によるVPN接続が可能になったことで、拠点間のネットワークインフラの格差が埋められるようになりました。例えばパソコンを使った出退勤管理の仕組みを導入しているのですが、これまでは出勤してもパソコンがつながらないことから入力できないケースがありました。衛星通信を使うようになって、打ち込み率が75%ほどからほぼ100%にまで高まりました。ペーパーレス化も、確実につながるネットワークインフラがあることで、どの拠点でも推進できるようになりました。
導入時や運用後にトラブルはありましたか。
笠井氏
当初、衛星通信サービスを利用している拠点と、既存の拠点がつながらないトラブルはありました。ただし、これはデータセンター側のルーティング経路の問題で、動的ルーティングを適用することでクリアできました。運用開始後は、1回だけ拠点のルータが初期化されてVPNが張れないトラブルがありました。とはいえトラブルはその程度です。細かな問題は、IIJのサポートを受けながらすぐに解決策を見つけて、対応できました。
今後の計画や予定について教えてください。
笠井氏
スガテックとしては、ネットワークの知見が足りない部分もあるので、今後のネットワーク強化について新しい技術やソリューションがあればIIJにどんどん提案してもらいたいと思います。
吉住氏
弊社は100年以上の老舗ですが、IIJもインターネット黎明期からビジネスを継続している老舗で、信頼感があります。電話で最初に声をかけてもらったときにも抵抗はありませんでした。
新谷氏
通信環境が悪い拠点については、衛星通信サービスの導入がほぼ一巡したところです。今後、さらにデータ使用量が多くなった場合は、衛星通信サービスの端末を増設するような対応をすることになると思います。
日本経済は労働人口が減少する課題に直面しています。そうした中でこれまでの業務ボリュームをこなすためには、生産性向上が不可欠です。衛星通信サービスの活用など最新のICTを導入して、今後も業務改革に貢献していきたいと考えています。
導入したサービス・ソリューション
お客様プロフィール
株式会社スガテック
本社:東京都港区海岸3丁目20番20号
設立:1920年1月
資本金:4億7,200万円
従業員:1,262人(2024年7月1日付)
※ 本記事は2024年12月に取材した内容を基に構成しています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。
市街地から離れたプラントなどのネットワークが「つながらない」「遅い」
臨海工業地帯などのプラント内に拠点を構えている中で、ネットワークに課題があったと聞きました。
スガテック 新谷泰久氏
プラントなどは市街地から離れたところにあり、ネットワークを敷設する際に様々な制約があります。ADSLがサービス終了を迎えることで、まず有線でネットワークを整備することが難しくなりました。ある拠点は数km四方の敷地の中にあります。事務所棟までは光ファイバーの回線が来ていても、そこから少し離れた当社の拠点までネットワークを敷設しようとすると莫大な追加コストがかかり、現実的ではありませんでした。
取締役常務執行役員
経営企画担当
新谷 泰久氏
スガテック 吉住圭司氏
そこで5G回線を使うホームルータを導入して、ネットワークを維持するようにしました。ところが、一般のユーザと共有する5G回線は、昼や夕方に通信速度が落ちてしまい、多くのクレームが出てきました。
システム企画室 統括マネジャー
吉住 圭司氏
スガテック 笠井洋一氏
2022年秋ごろから、別の方法はないか、情報収集を開始しました。その頃に、米国の衛星通信サービスが国内でも提供されるというニュースを聞き、衛星通信ならばプラント内などの場所を問わずに通信できると期待していました。ただ、なかなか国内でサービスが始まらなかったため、米国のサービス会社から直接端末を購入して、検証を進めることにしました。ただし、国内にはほとんど情報がなく、事例も見当たらなかったため手探りでスタートするような状況でした。
システム企画室 マネジャー
笠井 洋一氏