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インターネット・トリビア 地域の人々をつなぐ、小さなラジオ局

IIJ.news Vol.190 October 2025

執筆者プロフィール

IIJ 広報部 技術統括部長

堂前 清隆

IIJの技術広報担当として、技術Blogの執筆・YouTube動画の作成・講演活動などを行っています。これまでWebサイト・ケータイサイトの開発、コンテナ型データセンターの研究、スマホ・モバイル技術の調査などをやってきました。ネットワークやセキュリティを含め、インターネット全般の話題を取り扱っています。

インターネット上では、個人間のコミュニケーションから大規模な動画配信まで、さまざまな情報発信が行なわれていますが、インターネット以前から利用されていたメディアの存在意義が失われたわけではありません。技術的な理由による得手不得手もありますが、各メディアが作ってきた“空気感”は、簡単には代替できるものではないのです。例えば「ラジオ」が持つ雰囲気は独特で、同じ「放送」にカテゴライズされる「テレビ」ともまた異なります。

日本のラジオ放送は、各地にある大小様々なラジオ局から放送されています。全国共通の番組を放送する「NHKラジオ第2放送」のような大規模な局もあれば、都道府県を聴取エリアとしている小規模な局もあります。さらに、特定の市町村や半径5kmから15kmだけを対象にした極小の局もあります。

こうしたラジオ局は「コミュニティ放送局」として制度化されています。「コミュニティ」という名称の通り、地域密着で運営されており、地元のイベントや身近な話題が取上げられます。多くのコミュニティ放送局では手作りに近い番組作りが行なわれており、普段はラジオ以外の仕事をしている地元の方が、交代で放送に出演している局もあります。放送用設備も最小限で、会議室程度の部屋にマイクやミキサーを設置してスタジオにしたり、送信用のアンテナも地域のちょっと高い建物の屋上に間借りしているなんてこともあります。

そうはいっても、きちんと免許が出された立派な放送局です。放送する番組には責任を持つことが求められており、例えば、放送する番組の基準を定めることが法令で求められています。こうしたコミュニティ放送局は全国で340局を超えており、開設に向けて準備中の局もあります。もしかすると皆さんの地元にもコミュニティ放送局があるかもしれません。

地域密着という特性を持つコミュニティ放送局には、防災情報や災害時の緊急情報を地域の方に伝える役割が期待されている場合もあります。普段は楽しいトーク番組を流していながら、いざという時には、行政と連携して命を守るための情報を発信する準備をしている局も少なくありません。さらには「臨時災害放送局(臨災局)」という、災害対策に特化した特別な放送局もあります。普段は通常の放送を行なっていますが、災害発生時に臨災局が臨時に設置され、防災・減災・災害復興のための情報を発信します。

そうした特別なラジオ局は、総務省の各地方の総合通信局から送信用設備の貸し付けを受けることができたり、ラジオ局の免許も口頭で即時発行される場合があるなど、特別な制度が整えられています。

臨災局は1995年の阪神・淡路大震災を機に制度化され、その後、各地で50局以上が設置されています。2011年の東日本大震災では、東北各県で30局が設置され、貴重な情報源として活用されました。これらの局のなかには地域の方により、5年以上にわたって放送を続けた局もありました。放送内容も避難・災害復興に直結した情報だけでなく、地域をつなぐ話題へと広がっていったと聞いています。

これは、ラジオが単なる情報の伝達手段ではなく、番組制作スタッフから聴取者まで、そこに集う人たちの「コミュニティ」として機能していた証しであり、ラジオ特有のフォーマットや空気感があったからこそなしえたと言えるでしょう。

東日本大震災以降も大きな災害が発生すると臨災局が設置されています。こうした局のなかには、インターネットを介した放送の再送信やSNSなどで情報発信を行なっているところもあります。一度そういった放送を聞いてみてはいかがでしょうか。


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