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インターネット・トリビア コンピュータの性能とCPU

IIJ.news Vol.185 December 2024

執筆者プロフィール

IIJ 広報部 技術担当部長

堂前 清隆

IIJの技術広報担当として、技術Blogの執筆・YouTube動画の作成・講演活動などを行っています。これまでWebサイト・ケータイサイトの開発、コンテナ型データセンターの研究、スマホ・モバイル技術の調査などをやってきました。ネットワークやセキュリティを含め、インターネット全般の話題を取り扱っています。

コンピュータの性能を決める要因は何でしょう? と聞かれたら、多くの人が「CPUの性能」と答えるのではないでしょうか。CPU(Central Processing Unit)もしくはMPU(Micro Processing Unit)と呼ばれる部品はまさに“司令塔”として、数値計算に始まり、データの入出力や条件による処理の分岐など、コンピュータの主要な機能を司っています。

CPUの性能が向上すれば、コンピュータの性能も向上する。それは確かに間違いではないのですが、コンピュータの歴史のなかでは、さまざまな試行錯誤がありました。その一端を紹介します。

コンピュータ開発の初期からCPUの性能向上は非常に重要なテーマでした。しかし、ユーザの要求は貪欲で、CPU単体の性能向上が需要に追いつきません。そこで、1つのコンピュータに複数のCPUを搭載するアイデアが生まれました。ほとんどのコンピュータでは、平行して複数の処理を行なう必要があるので、CPUが1つしかない場合でも、非常に細かい時間で切り替えながら複数の処理を実行しています。よってCPUが2つあれば、処理を分担できるため、倍の性能が期待できるのです。

実際、大型コンピュータにおいては、1960年代から1つのコンピュータに複数のCPUを搭載する方式が普及していました。しかし、パソコンのような小型コンピュータでは、複数のCPUを平行して稼働させる仕組みは複雑で高コストになるため、導入が困難でした。

90年代から2000年頃にかけて、パソコンの性能はCPU単体の性能向上、特に動作速度の高速化に牽引されていました。しかし、2004年頃に大きな転機が訪れます。CPUの高速化が頭打ちになったのです。高速なCPUを作ろうとしても、当時の技術では発熱や消費電力の増加といったデメリットが強く出てしまい、市販するパソコンに使うには無理があったのです。

これを受け、パソコンの世界でも複数のCPUによる性能向上が模索されるようになりました。また同時期に、半導体技術の進化により、1つのCPUに複数の処理ユニットを持たせる「マルチコア」という技術が比較的安価に使えるようになったことも、この流れを後押ししました。その結果、2コア、4コアといった複数の計算ユニットをもったCPUがパソコンに搭載されることが一般的になりました。

外見上は1つのCPUに見えても、2コアであれば2個分、4コアであれば4個分の機能を持っています。マルチコアCPUが当たり前になると、それぞれのコアの高性能化とCPUに搭載されるコア数の増加が、かけ算のようにパソコンの性能向上に寄与するようになりました。

ところで、マルチコアCPUは、当初、同一性能のコアを複数搭載していました。ところが2010年代中頃になると、異なる性能のコアを1つのCPUに搭載するアイデアが生まれます。例えば、高性能4コアと低性能4コアを1つのCPUに搭載するといった具合です。

高性能なコアはプログラムを高速で実行できる代わりに、回路が複雑で高コスト、消費電力が多くなります。一方、低性能なコアは回路が比較的シンプルで低コスト、消費電力も少ないという違いがあります。キーボードの入力受付など、それほど高速でなくてもいい処理を低性能のコアで実行するようにして、高性能なコアは負荷の高い処理に使うようにすれば、コンピュータ全体の体感性能を落とさずに、コストや消費電力の低減が図れるのです。

このような仕組みは、まずスマートフォンのように電源が限られる機器で導入が進み、パソコンでも採用されるようになりました。コンピュータの性能向上、CPUの性能向上にもいろいろな工夫があるのです。


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