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IIJ.news Vol.185 December 2024
本稿ではMicrosoft 365 Copilotの導入から見えてきた業務における生成AI活用のポイントと今後の展望について紹介する。
IIJ経営企画本部 IT企画室 室長代行
廣川 真里耶
ChatGPTの登場から約2年――この短期間で企業の業務スタイルは大きく転換しました。IIJも時代の波に乗り、情報システム部門主導でMicrosoft Copilotを全社員に展開し、さらに一部ユーザを対象に、学習済みデータに加えて、自社利用のMicrosoft 365内に保存されたドキュメントの内容も参照しながら回答してくれるMicrosoft 365 Copilotの業務活用の検証を進めています。そして、ユーザへの定期的なヒアリングを通じて、特に効果的なツールや期待に沿わないツールを精査し、有効なユースケースや具体的な成果を上げたプロンプトに関する情報を収集しています。
ユーザのフィードバックから重要な知見が得られました。特に注目すべきは、Teams会議要約機能による業務削減効果です。例えば、営業業務における会議要約機能の有効なユースケースとして、次の3つが挙げられました。
① 業務都合で参加できなかった会議や勉強会のキャッチアップ
② オンライン商談における正確な状況把握
③ トラブルの早期発見と対処による営業品質の向上
一方、課題も明らかになりました。まず、ツールに起因する課題として、音声認識の精度が会議要約機能の質を直接左右する点が挙げられます。その要因は、会議の環境や使用機器により音声品質の差が出ること、話し方の個人差(発話の速度、声の大きさなど)が認識精度に影響を与えること、(一般的な語彙に比べて)専門用語や社内で使用される独自用語の認識が困難であることなどです。
これらの課題に対しては、音声認識エンジンの改善や専門用語辞書を拡充する一方、ユーザ側でもクリアーな発話を心がけたり、適切な環境で会議を行なうといった工夫を促すことで精度向上を図っています。
次に、ユーザ側に起因する課題として、会議頻度が低いユーザはMicrosoft 365 Copilotの活用機会が限定的で、メリットを十分に享受できていない状況が発生しています。ツールの使用が散発的であるため、その特性や最適な使用方法を学ぶ機会が不足し、十分な効果が発揮されていないのです。
この課題に対しては、継続的なトレーニングプログラムの提供や、活用事例の共有といったアプローチが考えられます。
今後の展開としては、オンライン会議の機会が多い営業部門への導入拡大を検討しています。多様な環境下で検証を行なうことで、Copilotの効果をさらに詳細に分析可能になると期待しています。同時に既存ユーザに対しては、効果的な活用事例の共有やトレーニング機会を提供していく予定です。
最後に、Copilotの導入以外のIIJにおけるAI関連の取り組みを紹介します。
IIJでは、AIの業務利用促進による生産性向上と、AIのビジネス活用による価値創出の2点をおもな目的として、さまざまな活動に取り組んでいます。
AIの業務利用促進においては、各部署に特化したAIの導入検証に関する技術支援やインフラ支援を行なっています。また、社内の成功事例の展開、ガイドラインの整備、学習機会の提供なども進めています。これらの活動は社内有志により実施されていますが、情報システム部門のメンバーも推進役として積極的に参画しています。
私たちは“技術者集団”という強みを活かして、共通ルールと安全な環境を準備することで、ユースケースを持つ社員が自由な発想でAI導入に取り組めるような支援を行なっています。実際のユースケースを通じて技術を身につけることは、2つ目の目的に挙げた「お客さまへの価値提供に必要なAI活用のノウハウを蓄積すること」にもつながります。今後も新しい技術を積極的に取り入れ、ネットワーク社会の発展に貢献してまいります。
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