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何に使う?ITリソース ガートナー社のTGR分析にもとづくIT投資評価

IIJ.news Vol.185 December 2024

IIJでは、中期計画立案に際して、ガートナー社が提唱する「TGRモデル」にもとづくIT投資評価を実施した。ここではその概要を解説する。

執筆者プロフィール

IIJ経営企画本部 IT企画室 室長代行

廣川 真里耶

TGRモデルとは

IIJの情報システム部門では、2021年度から2023年度の中期計画を立案する際、戦略的IT投資マネジメントに関する取り組みを開始しました。

これは、中期計画のなかで情報システム部門の基本施策として掲げられた「戦略的IT投資によって会社の成長に貢献する(戦略・集計にもとづきIT投資を行なうことで、業務やオフィス環境の問題解決を果たし、会社の成長に貢献するとともに、コストを平準化して業績影響を最小化する)」という施策の具体的なアクションとして導入したものです。

世の中に存在するIT投資マネジメントに関する情報のなかで、私たちが注目したのが「IT投資ポートフォリオ」という考え方です。IT投資ポートフォリオとは、企業が情報システムやIT関連の投資を行なう際、特性に応じて対象を分類し、企業戦略に沿った経営資源の配分を調整する手法です。

この考え方を簡潔に整理したのが、ガートナー社が提唱する「TGRモデル」です。TGRモデルでは、IT投資を次の3つのカテゴリに分類し、各バランスを確認します。

① 変革(T:Transform)
② 成長(G:Grow)
③ 運営(R:Run)

このモデルを活用することで、企業はIT投資をより戦略的に配分可能になります。

IT投資評価

TGRの具体的内容

具体的な取り組みとして、まず各カテゴリに対してより明解なイメージを持てるようにTGRを定義しました。

① T(Transform)

● 中期計画戦略の実現を直接の目的とする活動

  • 顧客と市場の拡大
  • 新規ビジネスの創出など

● 中期計画戦略の実現に間接的につながる活動

  • 組織力強化
  • 基盤強化など

② G(Grow)

● 業務効率向上を目的とした活動

  • 生産性向上
  • コスト削減など

③ R(Run)

● 事業運営維持を目的とした活動

  • ビジネス運営維持
  • 法令対応など

これらの定義にもとづき、部門の各アクションに対し、その特性に応じてTGRの割り振りを実施しました。その後、各アクションと予算を紐づけることにより、各カテゴリの投資額を算出する、という手段を考えました。

最初のTGR分析は(2022年度における)2023年度の予算編成時に行ないました。予算管理システムと連携し、各アクションに対する予算額からTGR比と投資額の全体像を可視化しました。これにより、現状の割合と目指すべき割合とのギャップが明確になりました。

2024年度からは、これらのデータをBIツールに取り込み、分析の幅を広げています。また、ギャップの大きな区分については、その内訳を部門やシステムごとに詳細に確認できるようになりました。(図1・2)

複数年度のデータを蓄積することにより、単年の予算TGR比と投資額に加えて、経年予算TGR比と投資額の変化や実績データの取り込みを行ない、分析情報の充実を図っています。

図1 部署別TGR割合

図2 システム別TGR割合

課題と展望

分析を進めるなかで、例えば、技術調査、検証、戦略企画立案といった活動は予算を用いた購買や発注と紐づかないため、現行の仕組みではIT投資額0円として換算されてしまうという問題が発生しました。これを解決するために下記の対策を講じています。

① 組織に所属する社員の活動もIT投資のTGRの定義にもとづいて比率を算出
② TGRの割合に応じて社員の人件費を分割
③ 部門全体のTGRの割合とコストの可視化

これらの指標により、より正確かつ包括的なIT投資評価が可能になりました。

ガートナー社は理想的なTGR比として「1:2:7」を提唱しています。一方、IIJの情報システム部門は、より積極的な“攻めの情シス”を目指して(T+G)の割合を5割以上とすることを目標としています。

今後は、目標を達成し、さらに効果的なIT投資管理をするために予算・実績TGR分析の精度向上を図るとともに、現中期計画最終年度である2026年度の予算立案時期までに3カ年分のデータを蓄積して、仕組みを成熟させることを目指しています。(図3)

図3 情報システム部門全体のTGR割合


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