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インターネット・トリビア データセンターは電力をどれだけ使うのか

IIJ.news Vol.183 August 2024

執筆者プロフィール

IIJ 広報部 技術担当部長

堂前 清隆

IIJの技術広報担当として、技術Blogの執筆・YouTube動画の作成・講演活動などを行っています。これまでWebサイト・ケータイサイトの開発、コンテナ型データセンターの研究、スマホ・モバイル技術の調査などをやってきました。ネットワークやセキュリティを含め、インターネット全般の話題を取り扱っています。

IT社会の中核的設備として注目が高まっているデータセンター。今回はデータセンターで使用される「電力」のトリビアを紹介します。

理科の授業でも扱われますが、電力は「W」(ワット)で表されます。電力Wは電圧V(ボルト)と電流A(アンペア)の掛け算で計算できます。例えば、100Vの電気が1A流れていると100Wです。ただ、これは電池のような「直流」の場合で、家庭用コンセントで使われる「交流」では、機器の性質によってズレが生じます。交流の場合、電圧と電流をかけ算した数値は、皮相電力VA(ボルトアンペア)と呼ばれます。データセンターの電力は1000倍を示す「k」(キロ)が頭につくことが多いのですが、「キロボルトアンペア」とは言いにくいため、「kVA」(ケーブイエー)とも呼ばれています。

コンピュータなどのIT機器の場合、皮相電力VAは電力Wの1.1倍程度を見込むことが一般的です。コンピュータの仕様書では機器の消費電力がWで表示される一方、電力設備は皮相電力VAで計算をしますので、その違いを把握することは重要です。ただ、大雑把に計算する時はW=VAとして扱うこともよくあります。

このWを「水道」に喩えると、蛇口から流れ出る水の勢いに相当します。蛇口を開け続けていると、どんどん水が流れていきますが、「蛇口から流れ出た水の総量=消費したエネルギー量」と考えるとわかりやすいでしょう。消費電力量を表す単位にはWh(ワットアワー)が用いられます。hは時間(hour)の意味で、1Wの電力を1時間使うと1Whとなります。よって、消費電力が250Wのサーバを2時間動かすと、500Whのエネルギーを消費したことになります。

電力の単位はデータセンターの規模を表す際にも使われます。データセンターの規模は敷地面積より、使用できる電力量の制約を受けることが多いためです。

近年相次いで建設されている「ハイパースケールデータセンター」は数十MW(メガワット)を超え、なかには100MWを超える規模のデータセンターも計画されています。このMWの「M」(メガ)は、1,000倍の1,000倍という意味です。ですから、50MWは5千万Wになるのですが、数字が大きすぎて実感がわかないので、一般家庭の消費電力に換算して考えてみましょう。

家庭の消費電力は電力会社と交わしている「契約アンペア数」が指標になります。単身世帯だと30A、少し大きめのお宅だと50A程度の契約になります。一般家庭の電圧は100Vなので、3,000VA〜5,000VA、つまり3kW~5kWになります。よって、ハイパースケールデータセンターの50MWは、一般家庭の契約容量に換算すると1万~1万6千軒分になります。

ただ、普通の家庭で契約容量いっぱいの電力を使うことはほとんどありません。家を空けている時や夜間など、あまり電力を使わない時間帯があるからです。例えば、5kWの契約でも、実際には月間の消費電力量が500kWh程度ということもあります。これに対してデータセンターの機器は24時間稼働し続けていますので、電力も終日、平均的に消費されます。仮に50MW級データセンターが契約容量の約70%で電力を使用し続けると、月間の消費電力量は25,200MWhになります。これは一般家庭の約5万軒分に相当します。

こうしてみると、データセンターは大きな電力を消費する困った施設のように思われるかもしれませんが、実はそうではありません。コンピュータを散在させるより、データセンターに集約するほうが、エネルギー効率は高くなりますし、さまざまな省エネ策も導入しやすくなるからです。データセンターは省エネに貢献している施設なのです。


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