IAMとは?PAMとの違いは?クラウド時代のアクセス管理を解説
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2023/05/25
- IAMやPAMとは何なのか、簡単に説明してほしい
- IAMとPAMの違いを説明してほしい
新型コロナウイルスの流行に伴うリモートワーク導入をきっかけに、企業内の情報リソースへのアクセス方法も多様化しています。以前にも増してユーザーの認証や権限管理が非常に重要になり、その方法や考え方にも様々なものが存在します。この課題を解決するために、IAMとPAMを採用する企業が増えています。
IAM(Identity and Access Management)はユーザーの認証、認可、アカウント管理など、一般的なアクセス管理に関連する機能を提供します。一方、PAM(Privileged Access Management)は管理者権限を持つユーザーのアクセス管理に特化しており、よりシステムの安全性を高めることができます。
本記事では、初心者にも分かりやすくIAMとPAMの内容を解説し、どのような違いがあるのかをお伝えします。
IAMとは
まず、IAM(Identity and Access Management)について、その基本的な概念や重要性、構成要素について解説します。
1. IAMは情報セキュリティの基盤
IAMは組織内の情報システムへのアクセスを管理・制御するための仕組みであり、情報セキュリティの基盤となる概念です。従業員が適切な権限でシステムにアクセスできるように、ユーザーIDやパスワードの管理、アクセス権限の割り当てなどを行います。シンプルな例として、IAMを導入することで、入社時に必要なアクセス権限をすぐに付与する事ができ、退職時には速やかな削除が可能になります。
セキュリティを高めるためには、境界線防御・ウイルス対策・エンドポイントセキュリティなど様々なソリューションを組み合わせる必要がありますが、IAMはまさにその基盤となる仕組みといえるでしょう。
2. IAMの重要性とメリット
IAMを適切に導入し、一元的にアクセス権限を管理することで、社内の情報セキュリティの強化やコンプライアンス遵守を実現できます。また、IAMを導入することで、権限の適切な管理が行う事ができるため不正アクセスを防ぎ、情報漏洩リスクの軽減が期待できます。
IAMは情報セキュリティの基盤として、安全性を保ちながら業務を遂行できる役割を担っています。
3. IAMの構成要素
IAMの構成要素は、認証、認可、および監査の3つです。これらの要素を組み合わせることにより、アクセス管理のプロセスを効率化し、情報セキュリティを向上させています。
認証 | 認証は、ユーザーが本人であることを確認するプロセスです。システムやアプリケーションにアクセスする際に、ユーザー名やパスワード、またはワンタイムパスワードや生体認証などの多要素認証を介して、その人物が本当にアクセス権限を持つユーザーであるかどうかを証明します。認証は、不正アクセスやなりすましを防ぐために重要です。 |
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認可 | 認可は、認証されたユーザーに対して適切なアクセス権限を与えるプロセスです。ユーザーの役割や権限に基づいて、どのリソースにアクセスできるかを制御できるため、社員を必要最小限のリソースにのみアクセスさせることで権限の不適切な使用を防止し、セキュリティを向上させます。 |
監査 | 監査は、システムへのアクセスや操作履歴を記録・管理し、万が一不正アクセスや情報漏洩があった場合に証跡を辿るためのプロセスです。監査を通じて、社外からの攻撃だけではなく社内のコンプライアンス違反の特定・解析も可能になるため、コンプアイアンスの面でもより確かな対策を講じることができます。 |
認証により正当なユーザーであることを確認、認可により適切な権限を制御、最後に監査によりアクセス状況を把握・評価というこれらの構成要素が連携して機能することで、IAMは企業の情報セキュリティを強化し、適切で効果的なアクセス管理を行う事ができます。
実際にIAMをクラウドへ導入する方法は以下のコラムをご参照ください。
PAM(特権アクセス管理)とは
続いてここからは、PAM(Privileged Access Management)とは何か、その意味や重要性について解説します。
1. PAMはセキュリティ管理方法のひとつ
PAMは、特権アクセス(Privileged Access)を管理するためのセキュリティ手法です。
特権アクセスとは、システムやアプリケーションの管理者や運用担当者など、特定のユーザーに与えられる高い権限を持ったアクセス権で、一般的なユーザーよりも広範な権限を持ち、システムの設定変更、データやアカウントの追加・削除・変更、セキュリティ設定の管理など、より重要な操作が可能です。1人のユーザーに特権を持たせる運用管理の他、特権アカウントを管理者として複数人で運用する場合もあります。またこれらの権限アカウントをスーパーユーザーと呼ぶこともあります。不適切な使用や悪意ある攻撃者による権限の悪用は、重大なセキュリティリスクや情報漏洩につながるため、特権アクセスを持つユーザーの認証や権限管理、操作履歴の監査は徹底的に行う必要があります。
このような特権アクセス管理を行うためのソリューションがPAMで、PAMは特権アクセスを持つユーザーのアクセス管理や権限の監視・制御、アクセスログの監査などを効果的に行うためのツールやプロセスを提供します。
2. PAMの目的
PAMの目的は、特権アクセスを持つユーザーの適切なアクセス管理を実現し、セキュリティレベルを向上させることで、PAMソリューションを活用し、より手軽に特権アクセスのセキュリティリスクを軽減させることができます。
また、PAMは業務効率の向上にも寄与します。特権アクセス管理の一元化することで、アカウントの管理が容易になり、権限の可視化や迅速な変更など、特権アクセス管理にかかっていた負荷を下げることも可能です。
3. PAMの機能
PAMの機能と目的は、特権アクセスを持つユーザーのアクセス管理、権限の監視・制御、アクセスログの監査を行い、情報セキュリティの強化、コンプライアンス遵守、業務効率の向上を実現させることです。
PAMの主な機能は以下の通りです。
アクセス管理 | 特権アクセスを持つユーザーのアクセス管理を行い、認証や権限割り当てを適切に実施します。これにより、不正アクセスの防止や適切な権限管理が可能になります。 |
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権限の監視・制御 | 特権アクセスを持つユーザーのアクセス権限の監視と制御を行う事で、権限の不適切な使用や悪意ある攻撃者による権限の悪用を防止し、情報セキュリティを向上させます。 |
アクセスログの監査 | PAMは特権アクセスを持つユーザーのアクセスログを収集し、監査を行います。これにより、セキュリティ違反やコンプライアンス違反が発生した場合に原因を特定し、適切な対策を講じることができます。 |
一時的な権限の付与 | PAMでは、特定のタスクやプロジェクトに対して一時的な特権アクセス権限を付与することができます。権限の追加削除が頻繁に必要な場合でも、セキュリティリスクを軽減しつつ柔軟な運用を行うことができます。 |
パスワード管理 | PAMは特権アカウントのパスワード管理を効率化し、定期的な変更や特定の強度をもつパスワードポリシーの適用をサポートする事で、不正アクセスのリスクを軽減します。 |
IAMとPAMの違い
ここまででお伝えしたとおり、IAMとPAMは、どちらも情報セキュリティにおいて重要な役割を果たすアクセス管理の手法ですが、対象とするアクセス権限や管理方法に違いがあります。
アクセス管理の観点からそれぞれ異なる対象と目的に焦点を当てており、全ユーザーに対するアクセス管理を行い、情報セキュリティを向上させることを目的とするIAMと、特権アクセス権限を持つユーザーに特化し、特権アクセスに関連するセキュリティリスクを軽減することを目的とするPAMです。これらの違いを理解し、それぞれのニーズに応じて適切なアクセス管理ソリューションを導入することが重要です。
IAMは、すべてのユーザー(従業員、顧客、パートナー等)のアクセス権限を管理するための仕組みです。ユーザー認証、アクセス権限の割り当て、および監査を含むアクセス管理の基本的な概念をカバーする事で、社内のセキュリティレベルを維持します。
一方、PAMは、システムやアプリケーションの管理者や運用担当者など、より広範な業務が許可され、かつ多くの情報資産にアクセスができるアクセス権限を持つユーザーのアクセス管理に特化しています。特権アカウントのパスワード管理、一時的な権限の付与、アクセスログの監査など、より高度な管理機能を提供し、社内でもごく限られた高いアクセス権限を持つユーザーをコントロールすることで、重大なセキュリティリスクや情報漏洩未然に防ぐ事が可能になります。
まとめ
ここまで、IAMとPAMの特長や違いをそれぞれ説明しました。
- IAM(Identity and Access Management)は、情報セキュリティの基盤となる概念で、ユーザーの認証や権限管理を効率的かつ適切に行うための仕組み
- PAM(Privileged Access Management)は、特権アクセスの管理と監査を行い、権限の悪用や情報漏洩のリスクを軽減するセキュリティ対策
- IAMとPAMの違いは、対象とするアクセス権限や管理の焦点が異なること。IAMは全ユーザーのアクセス管理に焦点があり、PAMは特権アクセスの管理に焦点がある
これらの要点を理解し、適切なセキュリティ対策を選択・導入することで、情報セキュリティの向上とリスクの軽減が期待できます。
クラウドサービスにIAMを導入する重要性や具体的な方法については以下のコラムで解説していますので、ご参照ください。