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配信ベストプラクティス

  • (※)このページで紹介している事項は記事初出時点の情報に基づいたものです。本ページはアーカイブとして掲載しています。

2012年12月4日

新しいデバイスが毎日のように登場し、フラグメンテーションが進む映像配信の世界。特定のフォーマットやプロトコルではカバーできない課題に直面しています。少ないリソースでより多くのスクリーンにコンテンツを届けるためには、どうすればいいのでしょうか?ここでは、「いまできる配信方法」をご紹介します。

移り変わる配信方式

多くのスクリーンにコンテンツを届けるためには、どうすればいいのでしょうか?かなり曖昧なくくりですが、ちょっと前まではWindows Media、Microsoft Silverlight、Adobe Flash Videoのいずれかを選べば大丈夫でした。High(高画質)とLow(低画質)の2つのビデオを用意し、SilverlightやFlash Videoの場合は視聴用のビデオプレイヤーを作れば完了です。インターネットを使ったビデオ配信の対象は主にPCやMacだったので、配信する際もある程度は想定ができたものです。

次に、2011年秋までの配信方法について振り返ってみましょう。季節を限定しているのには理由があるのですが、説明は後にするとして、それまでの配信方法は、基本Flash Videoで3スクリーン(PC、Mobile、IPTV)対応をすればOKとされていました。そして、HighとLowの2種類だったビデオは視聴環境の多様化に対応するべく、モバイル視聴用に384kbps、中画質版の768kbps、高画質版の1.5Mbpsといったような複数の帯域に対応するAdaptive Bit Rate対応が求められるようになりました。

そして、2011年秋以降、大きな変化が起こりました。インターネットに接続する多くのプラットフォームに向けて提供されてきたブラウザープラグインであるAdobe Flash PlayerのAndroid向けの開発中止が発表されたのです。上述のようにFlash Videoに対応していれば基本大丈夫という前提が、これで崩れたことになります。2012年8月以降はGoogle Playでの提供も終了しています。さて、どうすればいいのでしょうか?

2012年秋、今、最大限リーチを増やすためには?

ここがコンテンツ配信担当者の共通の悩みどころです。文書で説明しようと試みたのですが、かえって分かりづらくなってしまうため、まず図で説明します。

現時点での普及率を考えて、PC、Mac、Androidにはできる限りFlash Videoで配信します。そして、スマートフォン・タブレット。iOS系ではFlash Videoが再生できないので、Apple HTTP Live Streaming(HLS)を用意します。iPadは<VIDEO />タグを使ってビデオをインライン表示できますが、iPhoneの場合はWebブラウザから離れ、coremediaによる再生となります。また、Webブラウザを使わないで、専用アプリを作成してHLSによる配信という方法もあります。

Flash Playerを搭載していないAndroidには、HLS(<VIDEO />タグ/M3U8へのリンク)またはMP4をプログレッシブダウンロードで配信します。それでも無理な場合は代替画像を表示、もしくは専用アプリを用意してGoogle Playへ誘導します。

最後に、ゲームコンソール、HDMI USBドングルデバイス(これまた大雑把なくくりですが、HDMIやUSBを使ってTVなどのディスプレイにインターネット経由のビデオコンテンツを表示させるデバイスの総称です。U.S.ではこの種類のデバイスが数多く販売されており、日本でも2012年の夏以降にいくつか発売が開始されています)、専用デバイスなど。Flash Videoに対応していればPCと同じくFlash Videoで解決できるのですが、対応していない場合は、HLSやMP4をプログレッシブダウンロード、または固有のビデオフォーマットで配信します。

Windows 8でビデオを再生するためには?

2012年の秋以降、Windows 8が視聴環境に加わりました。未対応のままでは、従来のPC向けのFlash Videoは、Modern UIのInternet Explorer 10では表示できません。Windows 8に配信する場合は、

  • Microsoftのガイドラインに従ってサイトをデザインする(タッチ操作の考慮など)
  • Microsoftに、ホワイトリスト(CVリスト)登録をリクエストする
  • Internet Explorer 10に同梱されているFlash Playerをきちんと呼び出す(Playerのバージョン判定方法によっては、見られないこともある)

または、デスクトップ版のInternet Explorer 10へ誘導して再生できるように、METAタグを記述するなどの対応が必要です。

<meta http-equiv="X-UA-Compatible" content="requiresActiveX=true" />

めまぐるしく変わるプラットフォーム:Android

Androidは、この記事の執筆期間中にもアップデートがありました。セミナーのデモ用に、Android 4.1を搭載しているNexus 7を使って準備していたのですが、朝会社に来たら4.2のダウンロード完了と通知が画面に表示されていました。このように日々アップデートが続いているのが特徴です(デモなどで検証する際は、オートアップデートを停止しておくと良いですね)。

Googleが公表しているAndroidのバージョン別普及率(Platform Versions)によると、原稿執筆時点では2.3.3から2.3.7のGingerbreadが半数以上を占めています。これは、Flash Playerがインストールされていれば動作可能なバージョンです。AndroidでHLSのサポートが始まったのは、3.1のGingerbread以降です。各キャリアが秋以降に発売するスマートフォン・タブレットは4.0系または4.1、4.2を搭載するようなので、それぞれのデバイスでHLS再生時にどのような動作をするか、確認する必要があります。

今回複数のデバイスで検証していた際に分かった違いとしては、<VIDEO />タグを使ったインラインHLS再生が可能なデバイスと、別に動画プレイヤーを起動することで再生が可能になるデバイスがあるということです。インライン再生の場合も、デフォルトのWebブラウザでは無理だけれど、WebブラウザのChromeを別途インストールすればインライン再生が可能になることもありました。配信する際のヒントとしては、「視聴対象のAndroidバージョン設定は明確に!」です。

コンテンツ配信計画は大事!

後々慌てないためにも、事前に作戦を立てることが大切です。提供する内容によって異なる場合もありますが、参考までにご紹介します。

  • どのようなコンテンツを
    • 短い、中ぐらい、長尺
    • VoD、Live
    • ダウンロードの可不
    • 暗号化の要不要
  • 誰に向けて、どのような視聴環境に向けて
    • 常時ネット接続環境、Wi-Fi、モバイル(3G、LTE、WiMAXなど)
    • 家庭、企業
  • どの位の期間か?
    • 公開期間設定の要不要
  • どのような端末を視聴対象として
    • PC、Mac、Android、iOS、IPTV、Gaming Console、HDMI dongle box、eBooks reader
  • どのようなクオリティ、ビットレート、画角、音質を求めて
  • どのようなVideoフォーマット、Codecを使って
  • どのようなAudioフォーマット、Codecを使って
  • どのようなエンコーダーを使って
  • どのような配信方式を使って
  • どのようなビデオプレイヤーを使って
    • 既存のビデオプレイヤー 無償/有償
    • カスタムメイドのビデオプレイヤー 内製/外注
  • 字幕の要不要
  • どのような配信設備を使って
    • 自社設備
    • CDN
  • どのように視聴動向を把握するのか?

ビデオプレイヤーの選択は慎重に

視聴者との接点であるビデオプレイヤーは、慎重に選定することをオススメします。ビデオを再生する環境は日々変化しますし、配信方式も移り変わります。視聴者との接点であるビデオプレイヤーの選択を誤ると、最悪の場合、作り直すことになってしまいます。いずれのビデオプレイヤーもメリット、デメリットはありますが、できることなら長い期間育てて行ける(視聴者が使いやすいように改良が続けられている)ビデオプレイヤーが良いと考えています。

最後に

「マルチデバイスにおけるFlash Video再生フロー」のように、Flash Video + HLS + MP4のすべてを用意すればかなり多くのデバイスにリーチできます。ただ、これでも完璧ではありません。長尺のコンテンツはプログレッシブダウンロードによる配信には不向きですし、著作権が関わるとさらに問題は複雑です。最初にコンテンツ配信計画を立て、提供するコンテンツの視聴範囲について考えることが大切だと思います。すべてのスクリーンにビデオを配信する方法はありませんが、工夫することでより多くのデバイスに配信することは可能です。あきらめずに、無理をせずに、続けることがより多くの視聴を可能にします。

IIJでは、大規模コンテンツ配信サービスを通じて、今後も更に良い配信ができるよう努めて参ります。

林 岳里

執筆者プロフィール

林 岳里(はやし たけさと)

IIJ プロダクト本部 基盤プロダクト開発部配信技術課 シニアエンジニア
2012年IIJ入社。FCバルセロナのソシオ会員になるべく毎年のバルセロナ旅行を夢見る毎日。愛読書は通勤中に勉強しているNHKラジオ「まいにちスペイン語」。

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